2025年WeChat基本機能から中国マーケティング活用法
中国人がスマートフォンを購入して一番最初にダウンロードすると言われている、「WeChat(微信)」。
日本ではあまり馴染みのないSNSですが、WeChatとはどんなアプリなのでしょうか?
本記事では、世界をリードするデジタル大国・中国の”ウェブインフラ”の一つである、「WeChat」の基本機能・他のSNSとの違い・企業のプロモーション活用法などについてご紹介します。
デジタル人民元(e-CNY)実装の準備が着々と進められているWeChatの、2025年最新情報を見ていきましょう。
目 次
「WeChat(微信)/ウィチャット」とは?
WeChat(ウィーチャット)は、Tencentによって開発された、多機能メッセージング・ソーシャルアプリです。
2011年にリリースされ、開発当初は WhatsApp や Messanger のようなシンプルなメッセージングアプリでしたが、現在ではソーシャルメディア機能、モバイル決済、ミニプログラム、EC、AI機能などを統合した「オールインワンプラットフォーム(スーパーアプリ)」です。
正式なユーザー数は公表されていませんが、2025年Q2の決算資料によると、WeChatとWeixinの合算での月間アクティブユーザーは、14億1,100万人に達しています。
中国国内版が「Weixin(微信)」で、海外利用者向けに「WeChat」として展開
WeChatの主な機能
WeChatの主な機能は、メッセージング機能やSNS機能(モーメンツ)、WeChat Pay(微信支付)、ミニプログラム(小程序)、企業の公式アカウント、サービス連携(交通、公共サービスなど)、送金、チケット予約、税金申請、オンライン診察、健康状態の証明など、多岐にわたります。
私たち日本人で例えるなら「LINE + X + PayPay + 楽天 + GoogleMap + GO(タクシー) 」など、あらゆる生活サービスが一つに統合されたアプリと表現するとイメージしやすいかもしれません。
WeChatのユーザー属性
日本人にとってはあまり馴染みのない WeChat ですが、ユーザー数は世界で 5 番目に多いソーシャルプラットフォームです。中国国外にも推定一億人以上のユーザーがいるといわれており、世界中の中華圏コミュニティから強い支持を得ています。
- 女性ユーザー:47.8%、男性ユーザー:52.2%
- 25-34歳が約24%、40歳以上が21%以上
- WeChatの1日あたりの平均利用時間:一日66分
- 20以上の言語が利用可能
- 200の国と地域をカバー
- 中国だけでなくモンゴルや香港、中華系移民の多いシンガポールでも利用可能
WeChatが海外企業にとって重要な理由
圧倒的なユーザー数
先述したように、WeChatは月間アクティブユーザー 14億1,100万人 を抱える「スーパーアプリ」です。若者世代から高齢者まで幅広いユーザーを有しており、ユーザーの75%が「毎日WeChatを利用する」など、中国人の生活に深く浸透したツールです。
中国でのプレゼンスを確立するための優れた方法の一つとして、世界中のあらゆる企業にとって欠かせないツールになっています。
公式アカウントを通して直接的なエンゲージメント
企業は公式アカウントを開設することで、コンテンツ配信、キャンペーンの展開、フォロワーとの交流が可能で、企業のマーケティング活動に大きく寄与します。サブスクリプションアカウントでは、定期的な情報配信やキャンペーン告知が可能です。
中国ではユーザー数の多さや利用頻度の高さから、従来のメールマーケティングの代替え手段としても活用されています。
シームレスな顧客体験
企業は「ミニプログラム」を活用することで、オンラインストア、予約システム、カスタマーサポート、ゲームといったアプリ的な体験をWeChat内に直接構築が可能です。さらに、実店舗とQRコードを組み合わせることで、オフラインからオンラインへのスムーズな誘導が可能になり、OMO施策の核としても機能します。
WeChat Payによる購買促進
WeChat Pay は中国における主な決済手段として、普及率90%以上を誇り、日常的な買い物から公共料金の支払い、送金、税金の支払い、交通違反金の支払い、アプリ内で投資商品やマイクロ((インターネット接続がなインターネット接続がなくくインターネット接続なし)での支払いも可能になりました。
また、WeChatは、既にデジタル人民元(e-CNY)の取り扱いを開始しており、試験的に個人向け小売決済(飲食、交通、ショッピング)から段階的に導入が開始されています。WeChat Payのウォレットページに「デジタル人民元」という項目が追加され、支払いも可能です。
企業にとっては、消費者が「気になったらすぐに購入できる」環境を提供できるため、購買プロセスの障壁を取り除き、売上促進につながります。中国市場では利便性とスピードが顧客満足度を大きく左右するため、WeChat Payの導入は単なる決済機能以上に、顧客体験全体の価値向上につながる重要な要素です。
消費者との深い関係構築
WeChatは、コミュニケーションツールであるため、個別チャットやグループチャットを通じてリアルタイムで顧客対応が可能で、サービスや商品に関する即時のフィードバックを受け取ることもできます。
データ分析機能を用いることで、指標を把握し、マーケティング施策の改善に役立てられます。WeChatを通じたこうしたパーソナライズされたやり取りは、顧客ロイヤルティを高め、長期的なファン基盤の形成に大きく貢献します。
WeChatの基本機能
WeChatは「チャット・連絡先・発見・自分」の4つのメインメニューを中心に構成されており、日常生活からビジネスまで幅広く活用されています。主なWeChatの機能や特徴をご紹介します。
ユーザーコミュニケーション
- テキスト・音声・ビデオ通話、グループチャットに対応
- ステッカー、写真・動画共有、位置情報送信、Bluetooth経由でファイル転送も可能
- “既読”表示はなし
中国人は「ボイスチャット」が主流。LINEのスタンプに相当する「ステッカー」や、写真・動画、連絡先や位置情報の送信も可能。
ソーシャルネットワーキング
- モーメンツ:LINEでいう「タイムライン」、FacebookやInstagramのフィードに近い機能。友人や企業の投稿を共有・閲覧でき、コメントや「いいね」で交流可能。一日平均で30億件もの投稿がされている。
- Channels(チャンネル):TikTokのようなショート動画・ライブ配信機能。ブランドやインフルエンサーの情報発信に活用される。
企業が活用できる広告の一つ「WeChatモーメント広告」は、このモーメントのフィード内に表示できるスポンサー付きコンテンツ
ミニプログラム(小程序)
- WeChat内で動作する「アプリ内アプリ」
- EC、配車、予約、ゲーム、配車サービス、行政・教育・医療など幅広いサービスを提供。
- 配車サービスは、1日4億人が利用するなど、生活には不可欠なツールとして機能
- ミニプログラム内での支払いは、WeChat Pay連携によりWeChat内で完結する
ユーザーはアプリをダウンロードする手間なく、全てミニプログラムを通して全て利用が可能です。ミニプログラムは初回起動時には表示されていないため、自分で「検索」から探して追加する必要があり。デジタル人民元(e-CNY)決済とシームレスに連携しており、ユーザーはWeChatアプリ内のミニプログラムを通じて直接デジタル人民元で支払いが可能です。
公式アカウント
- 企業や団体が情報発信・広告・顧客対応を行うためのチャネル
- ニュースやマルチメディアを定期配信でき、顧客との直接的なエンゲージメントが可能
- 世界中の多くの企業が公式アカウントを開設
WeCom(旧WeChat Work)
- 海外企業向けのビジネスコミュニケーション・オフィスツール。SlackやTeamsのような社内ツールに加え、顧客とのやり取りまで統合できるビジネス版スーパーアプリ
- 企業向けソリューション(社内コミュニケーション、顧客管理)
- WeChatエコシステムと連携し、BtoB・BtoC双方での活用が可能
2023年時点で2,300万回以上ダウンロードされました。
WeChat Pay(微信支付)と金融サービス
- QRコード決済、送金、光熱費・税金の支払いに対応
- 投資商品やマイクロローンまで契約可能
- 中国人旅行者が空港等に設置された端末で支払いやポイントとしてチャージ可能
- オンライン・オフライン問わず利用でき、中国国内の店舗や旅行者にも広く普及
- デジタル人民元の取り扱いが可能に。
WeChatPayは中国におけるインフラの中心的存在。今後実装されると噂されるデジタル人民元は、国が管理・推進する新たな決済システム。今後、政府系サービス(税金・公共料金・補助金など)は、デジタル人民元利用が推奨される可能性が高く、既に多く試験的導入が始まっています。2024年7月時点で、デジタル人民元アプリによる取引総額は7.3兆元に。WeChatミニプログラムもシームレスなデジタル人民元取引が可能となっています。
東南アジアの一部の途上国では、WeChat Payの利用が広がっており、中国経済との結びつきの強い国ではデジタル人民元が今後流通する可能性はあります。デジタル人民元の本格導入の動きが進めば、顧客の購買行動は大きく変化し、企業のマーケティング戦略にも影響を与えます。本格導入がいつ頃始まるか、デジタル体験はどのように変化するかは企業も注視すべきでしょう。
その他の機能
- QRコード/シェイク機能:LINEの「ふるふる」機能。簡単に連絡先交換可能
- トップストーリー:ニュース閲覧(LINEニュース的機能)
- WeChat検索:WeChat内の投稿・記事・公式アカウント・ミニプログラムを横断検索
- 「自分」メニュー:プロフィール管理、クーポン保存、投稿履歴の確認など
基本的な機能をご紹介しましたが、中国版では、より多くの便利な機能が実装されています。
WeChatの位置づけ「Weixin・Weibo・QQ」との違い
中国にはさまざまなSNSやアプリがあります。この章では中国で人気の高いSNSとWeChatを比較してみます。
✅ WeChat(微信)とWeixin(微信)の違い
WeChatとWeixinは同じTencentが提供するサービスですが、国によって呼び方と機能が違います。中国版は「Weixin」、国際版は「WeChat」です。
日本でこのアプリをダウンロードしようとすると、アプリストアには WeChat が表示されます。機能面でも異なり、Weixinはミニプログラムや豊富な公式アカウント機能を備えたフル機能版ですが、海外版WeChatは一部機能が制限されています。
海外企業が公式アカウントを開設したい場合、「WeChat」で公式アカウントを開設する必要があります。
✅WeChatとWeibo(微博)の違い
ウェイボーも中国人ユーザーたちが最新情報を取得するのに日常的に利用する便利なソーシャルメディアです。Weiboの月間アクティブユーザーは、2023年Q1時点で5億9000万人に達し、WeChatと同様に、企業の「公式アカウント」を開設や広告出稿が可能で、企業情報を発信するために利用することが可能なSNSです。
WeChatとWeiboの大きく異なる点は、ユーザーの「使い方」です。Weiboは「公式情報の発信」に向いており、WeChatは「既知サービス告知・ファン集め」向いているという点が挙げられます。
Weiboは中国版XやFacebookと言われており、ブランド認知拡大や情報拡散に長けています。一方、WeChatは広く情報発信するというよりも、既に認知されているサービスの告知や、ファン・コアユーザーとのコミュニケーション、サービス利用の定着に向いています。
✅ WeChatとQQの違い
WeChat・QQ は、どちらもTensent が提供しているメッセンジャーソーシャルメディアです。
QQはデスクトップ利用が多く、ゲームや音楽、QQ空間などの利用している学生などの「比較的年齢の低いユーザー層」が多い傾向にあります。一人一台スマホの現代社会では、ユーザーは自然にWeChatへ流れていきました。
WeChatはスマホ普及とともに急成長し、生活を基盤とするさまざまな機能を実装することで、ほぼ全世代をカバーする国民的アプリとなったというのが一般的な認識です。
企業のWeChatプロモーション活用方法
近年では、ライセンスを持たない企業でも公式アカウントの申請が可能です。さらに、以前は海外ユーザーによるアクセスに厳しい制限がありましたが、現在では海外企業の公式アカウントも誰でも閲覧できるようになり、企業によるWeChat活用は一層活発化しています。
では、具体的にWeChatをどのようにビジネスに活用できるのかを見ていきましょう。
1.WeChat公式アカウントを開設する
WeChatビジネスアカウントは、メディアや企業、有名人、政府機関が開設できる公式アカウントです。公式アカウントを通じて企業は膨大なユーザーにメッセージを送ったり、購読者とフォロワーを増やし、定期的に更新を行うことでブランド認知を高めることができます。
WeChat公式アカウントには2種類タイプあります:
- サービスアカウント
- サブスクリプションアカウント
それぞれにメリット・デメリットがあるため、特徴を把握したうえで、自社のビジネス目的にマッチした最適なアカウントを選択しましょう。両方設定することも可能です。
※なお、中国国内での会社登録がある場合はすべてのアカウントタイプを利用できますが、海外企業はサービスアカウントのみ登録可能となっています。WeChatのエンタープライズ向けサービスであった「WeChat Work」は、「WeCom」としてリブランドされました。
2.ミニプログラムを作成する
海外の企業であってもWeChatミニプログラムを制作するためのライセンスを申請することができます。申請が通過すると、企業はミニプログラムを通して、13億人のWeChatユーザーがアクセスできるアプリを作成することができます。
WeChatミニプログラムの開発や導入プロセス、保守は非常に簡単で、HTML、JavaScript、CSS に似た独自の言語を使用します。通常のアプリ開発と比較すると開発作業に必要な技術リソースや時間を削減することができます。
3.WeChat広告を活用する
代理店を介することで広告主は、海外企業であっても広告を利用することが可能です。WeChatモーメンツ、WeChat公式アカウント、WeChatミニプログラムで広告枠を購入できます。WeChat では主に以下の 3 つの広告が利用可能です。
WeChat公式アカウントやミニプログラム内に表示されるバナー広告です。ロゴ・アカウント名・見出しを含むバナーを表示することが可能です。料金(CPM)は都市の大きさによって異なります。
ユーザーのモーメンツ(フィード内)に表示させるスポンサー付きコンテンツです。
ブランド名・画像・短編動画・広告ディスクリプション・テンセント社がホストしているサイトへのリンクなどを含めることが可能。ユーザーが六時間以内に広告にコメントやいいねなどのアクションがない場合、自動的にタイムラインから消去されます。
ミニプログラム内、WeChatミニゲーム内に表示される広告です。ただし、どのミニプログラムに広告を表示させるかを選択することはできません。バナー広告や動画広告、ポップアップ広告など多様な形式が利用可能。
WeChat動画アカウント広告(ビデオチャンネル広告)は、基本的に中国国内に登録された法人のみが利用可能。WeChat検索広告は、一般的に中国国内の事業体を持つ企業に限定されており、外国企業のみが直接利用することは難しい。
WeChatアカウントを申請するには?
企業がWeChatのビジネスアカウントを取得するには、以下のいずれかに該当する必要があります。
- 中国法人
- 外国企業として – 第三者の中国ライセンスを通じて申請
- 外国企業として(WeChat広告の利用が必要)
-
- ダイレクト
- 独自の中国事業体を通じて
- 中国に事業体を持つ他の企業と協力する場合
しかし、上記の要件を満たしていない場合であってもサードパーティを利用してWeChatビジネスアカウントは開設できます。
中国におけるビジネスライセンスや中国人IDが無い場合でもWeChatビジネスアカウントは開設が可能です。申請手続きは複雑ではありませんが、ビジネスの正当性を証明する書類など、多くの書類が必要になります。申請後はアカウントの種類によって異なりますが、約2週間ほどで結果が得られます。申請フローは以下になります。
- アカウント作成
- サービスアカウントの申請(約99ドルの手数料支払い含む)
- 各種企業証明書、担当者の身分証明書・携帯明細等の提出による認証申請
- 審査期間経過後の認証完了とアカウント運用開始
さいごに
中国人にとっての「WeChat/微信」は、日本人にとってのLINE以上に「普段の生活に無くてはならないツール」にまで発達しました。14億人とつながることができるWeChatは、中国マーケティングにおいて活用法は無限大と言えるでしょう。
「自社に中国人スタッフはいないけど、マーケティングで中国市場を狙いたい」とお考えでしたら、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. WeChatとは何ですか? |
WeChat(微信)は、Tencentが提供する中国の「スーパーアプリ」です。メッセージング、SNS、決済(WeChat Pay)、ミニプログラム、EC、行政サービスなど多様な機能を統合しており、中国人にとって生活インフラのような存在です。 |
Q2. 中国マーケティングにWeChatを活用するメリットは何ですか? |
WeChatは14億人以上のユーザーを持ち、生活に密着しているため、企業が直接顧客にリーチできます。公式アカウントや広告、ミニプログラムを通じて、認知拡大から販売・決済・顧客対応までワンストップで行えるのが大きな強みです。 |
Q3. 日本企業でもWeChat公式アカウントを開設できますか? |
はい。申請には手数料や企業証明書の提出が必要です。ご相談ください。 |
Q4. サービスアカウントとサブスクリプションアカウントの違いは何ですか? |
サービスアカウントは「販売促進や顧客サービス向け」、サブスクリプションアカウントは「情報発信やコミュニケーション向け」です。 |
Q5. ミニプログラムとは何ですか? |
WeChat内で動作する「アプリ内アプリ」です。EC、予約、チケット販売、ゲームなど幅広い機能を提供できます。 |
Q6. WeChat広告とWeChatマーケティングの違いは何ですか? |
どちらもブランドの宣伝に利用されますが、アプローチが異なります。 WeChat広告:有料広告。モーメント広告や記事バナー広告などを通じて、短期間で認知度向上・クリック数増加・売上促進を狙います。即効性は高いですが、多額の予算が必要です。 WeChatマーケティング:オーガニック施策と有料施策の両方を含みます。公式アカウントでの定期的な情報発信、ミニプログラム活用、フォロワーとのコミュニケーションなどを通じて、顧客との長期的な関係構築に重点を置きます。比較的低コストから始められます。 |
2020年4月21日公開
2025年8月21日更新

吉田 真帆 マーケティング部 プランナー
コンテンツ・SNS・メールマーケティングを統括。オーストラリアの永住権を取得したにも関わらず、思いもよらず日本に帰国。日本8年を経て、現在はシンガポールからフルリモート3年目。