韓国マーケティングの進化|
2025年総括と 2026年に押さえるべき視点

韓国では、日本への好感度が過去最高水準を記録するなど、「日本」への関心がこれまで以上に高まっています。加えて、韓国からのインバウンド観光客数も絶好調。
こうした背景を受け、韓国市場への本格的なアプローチを検討する日本企業も増えてきているのではないでしょうか。

< JNTO:「日本の観光統計データ」https://statistics.jnto.go.jp/graph/#graph–Japanese–Trends>
一方で、実際に韓国マーケティングに取り組もうとすると、「最新のトレンドをどのように把握すべきか」「どのような施策が、今の韓国市場で本当に有効なのか」といった点で悩む声も少なくありません。
そこで本記事では、i CROSS BORDER JAPANの韓国人スタッフの視点から、2025年に韓国市場で起きた変化を振り返りつつ、2026年の韓国マーケティングをどのような前提で考えるべきかを整理します。
最新トレンドと実務視点を踏まえ、今後の韓国マーケティング戦略を検討するための判断材料としてお役立てください。
目 次
2025年韓国マーケティングトレンド振り返り― AI普及がマーケ施策に与えた3つの変化
韓国のマーケティング市場は、テクノロジーの急速な進化と消費者ニーズの変化により、毎年新しいトレンドが生まれています。本章では2025年の韓国マーケティングトレンドを振り返り、特に注目すべき3つのポイントを整理しました。
① AI施策の重要性がさらに高まる
2025年は、韓国社会全体でAI活用が大きく進展した一年となりました。
韓国のデジタルマーケティング企業 incross の調査によると、「生成AIサービスを利用したことがある人」は全体の68%にのぼっています。年代別に見ると、若年層ほど利用率が高く、10代・20代では8割以上が生成AI を利用していることがわかりました。
- 10代:81%
- 20代:81%
- 30代:75%
- 40代:62%
- 50代:52%
また、情報収集の手段としてAIサービスを活用する比率は前年比315%増加しました。ChatGPT やGemini をはじめとする生成AI は、従来の検索エンジンに代わる新たな情報収集チャネルとして急速に浸透しています。

さらに、韓国最大の検索エンジンである NAVER では AI による要約機能が実装され、Gemini にはショッピング機能が追加されるなど、AI を起点とした情報取得から購買までの行動が一般化しました。
こうした変化を受け、2025年の企業マーケティングにおいては、「AI上でブランドや商品をどのように認識・表示させるか(AI Visibility)」が、重要な戦略テーマとなった一年だったと言えるでしょう。
② 顧客データの価値がより重要に

2025年を振り返ると、韓国では消費者のプライバシー意識が大きく変化した一年でもありました。
前年には、大手グローバルプラットフォームが結婚状況や宗教といったセンシティブな個人情報を広告に利用したとして罰金処分を受けたほか、大手企業による個人情報流出事故が相次いで発生しました。
こうした出来事を背景に、韓国の消費者の間では個人情報の提供に慎重になる傾向が強まり、企業がマーケティングに活用できるデータの「量」や「質」にも影響が及びました。
一方でその反動として、顧客が自らの意思で提供するデータ( Zero-party Data )の価値が改めて注目されるようになりました。
信頼関係のもとで取得される Zero-party Data は、精度が高く、かつ持続的に活用できることから、ブランド・企業にとって重要なマーケティング資産として位置づけられた一年だったと言えるでしょう。
③ “人間らしさ”を重視したクリエイティブの再評価
2025年の韓国市場では、AI技術を活用した広告やコンテンツが急速に増加する一方で、AIだけに依存した表現に対する消費者の評価は必ずしも高いとは言えない状況も明らかになりました。
韓国のデジタルマーケティング企業 CJ MezzoMedia の調査によると、「生成AI で制作された広告は注目度が高い」と回答した韓国人は 23% にとどまり、「生成AI で制作した広告のブランドは信頼できる」と回答した割合は 16%にとどまっています。

この結果から、AI は効率化や量産には有効である一方、ブランドへの信頼形成や共感の獲得においては限界があることが示唆されます。
そのため2025年は、AI による制作支援を前提としつつも、人間ならではの視点やストーリーテリング、文脈理解を活かしたクリエイティブ設計が改めて重視された一年となりました。
韓国デジタルプラットフォームの最新利用状況
韓国市場でマーケティング施策を展開する際、どのプラットフォームを活用してマーケティング施策を展開するかは、成果を左右する重要なポイントです。
本章では、最新データをもとに、韓国における主要デジタルプラットフォームの利用状況を整理し、まず押さえておきたいポイントを紹介します。
① 韓国で利用されている「検索エンジン」
検索エンジンは、検索広告(リスティング広告)の配信や SEO対策によって、商品・サービスを探しているユーザーに対し、適切なタイミングで情報を届けることができるため、新規顧客獲得や市場拡大に有効なマーケティングチャネルです。
世界では Google や Yahoo、Bing が活用されていますが、韓国は事情は異なります。

Internet Trend による韓国の検索エンジン占有率を見ると、韓国独自の検索エンジンである NAVER が 63.56%と圧倒的なシェアを占めています。これに次いで Google が 28.79%となっており、 Daum(3.15%)や Bing(3.11%)は、比較的限られたユーザー層に利用されている状況です。
NAVER は、韓国語のウェブサイト検索に加え、NAVER カフェ、NAVER ブログ、NAVER ショッピングなど、自社が提供する多様な韓国語コンテンツを横断的に検索できる点が特徴です。そのため、情報収集から日常生活に至るまで、韓国人にとって欠かせないプラットフォームとなっています。
マーケティングの観点でも、日本では Google を中心とした広告配信や SEO 対策が主流であるのと同様に、韓国市場では NAVER を軸にした広告施策やマーケティング戦略が重要な位置を占めています。
Tips:韓国人は NAVER と Google を使い分けています。さらに、Daum はニッチなターゲットへのアプローチに活用できるケースもあります。
韓国での検索エンジン事情はこちらで解説します。
② 韓国で利用されている「メッセンジャーアプリ」
メッセンジャーアプリは、消費者一人ひとりに対して直接かつパーソナルな情報を届けられる点で、信頼構築やエンゲージメント向上に効果的なコミュニケーションツールです。では、韓国ではどのようなメッセンジャーが利用されているのでしょうか。

韓国科学技術情報通信部が 2025 年に公開した「インターネット利用実態調査」によると、韓国では KakaoTalk の利用率が 98.0% と圧倒的な水準を誇っています。一方、日本で主流の LINE は 4.9% にとどまっており、韓国市場における存在感は限定的です。
そのほか、若年層を中心に Instagram の DM が 24.2%、Facebookメッセンジャーが 14.9% 利用されるなど、SNS系メッセージ機能の活用も一定数見られます。
マーケティング施策においては、主軸となるのは KakaoTalk です。広告配信にとどまらず、企業アカウントを通じた情報発信や問い合わせ対応など、「企業⇔個人」の継続的なコミュニケーションを支えるプラットフォームとして、幅広く活用されています。
③ 韓国で利用されている「ソーシャルメディア」
ソーシャルメディアは、消費者とダイレクトにつながり、ブランド認知の向上やファン育成に大きく貢献する重要なチャネルです。特に口コミやユーザーの評価が購買行動に大きな影響を与える韓国市場では、SNS の活用は欠かせません。

韓国 Gallup が公開した「直近1か月の利用ソーシャルメディア」によると、韓国では YouTube が 91%と圧倒的な利用率を誇っています。続いて Instagram が 32%、NAVER Band が 26%、TikTok が 19%、Facebook が 19%、Kakao Story が 17%となっています。
一方、日本で高い利用率を誇る X は 4%にとどまり、韓国では主流のプラットフォームではないことが分かります。
ただし、韓国では世代ごとに利用されるソーシャルメディアが大きく異なる点には注意が必要です。例えば、Z世代からM世代では Instagram の利用が中心である一方、ベビーブーム世代では NAVER Band や Kakao Story が日常的なコミュニケーションツールとして活用されています。
そのため、韓国向けのソーシャルメディア施策では、単に利用者数の多いプラットフォームを選ぶのではなく、ターゲットとなる年齢層・各プラットフォームの特性・最新トレンドを掛け合わせた戦略設計が、成果を左右する重要なポイントとなります。
2026年の韓国マーケティングで押さえるべき 4つの前提
前章では、2025年時点での韓国マーケティング環境と主要デジタルプラットフォームの利用状況を整理しました。
ここからは、マーケターにとって必読書「Trend Korea」を参照に、変化を踏まえ、2026年に向けて企業が前提として持つべきマーケティングの考え方を整理します。
① ヒューマン・イン・ザ・ループ(Human-in-the-Loop)

― AI活用は「全自動」ではなく、ローカル感性との融合が鍵
韓国でもAI活用は急速に進んでおり、市場調査、翻訳、広告運用、クリエイティブ制作など、マーケティング業務の多くがAIによって効率化されています。一方で、こうした流れの中でも注目されているのが、「ヒューマン・イン・ザ・ループ(Human-in-the-Loop)」という考え方です。
これは、業務をAIに任せきりにするのではなく、意思決定のプロセスに人間が関与し続けるという設計思想を指します。
マーケティングにおいては、「韓国の消費者に本当に響く表現か」「文化的に違和感はないか」といったローカライズの最終判断が、依然として人の役割として重要です。
特に韓国市場では、言葉のニュアンスや感情表現への感度が高く、AI任せの表現は違和感を持たれやすい傾向があります。そのため今後は、AIによる「業務効率化 × 韓国人ネイティブの感性」を活かした判断を組み合わせる、ヒューマン・イン・ザ・ループ型のマーケティング設計が、競争力の差につながっていくと考えられます。
② フィルコノミー(Feelconomy)

― 「必要性」ではなく「感情」を起点にした消費行動
消費に慎重とされてきた韓国社会において、近年注目されているのが、感情(Feel)を起点とした消費行動を指す「フィルコノミ(Feelconomy)」です。
これは、「必要だから買う」という合理的な判断に加え、「今の気分を変えたい」「気持ちを満たしたい」といった感情が、購買の大きな動機となる経済現象を意味します。
たとえば、「憂鬱だからパンを買った」といった表現は、MBTIブームとともに広がったミームの一つですが、韓国の20〜30代を中心とした消費傾向を象徴しています。
こうした“気分起点”の消費は、購入後の満足度が高く、SNSで共有・共感されやすいという特徴もあります。
マーケティングの観点では、商品やサービスの機能・価格訴求だけでなく、「その体験がどんな感情をもたらすのか」を可視化することが重要になります。特にSNS上では、感情に寄り添ったストーリーや実体験ベースの表現が、共感を生みやすい傾向にあります。
💡韓国マーケティングへの示唆
- 商品やサービスが生む「感情価値」を言語化し、クリエイティブに反映する
- 共感・気分転換・癒しといった文脈でのSNSコミュニケーションを強化する
③ ゼロ・クリック(Zero-Click)

― 「クリックされない」ことを前提とした情報接触の時代
韓国でも、情報探索のスタイルは大きく変化しています。
従来のように検索結果から複数のサイトをクリックして情報を集めるのではなく、検索エンジンやプラットフォーム上に表示されるAIの要約・推薦情報だけで意思決定を行う「ゼロ・クリック」傾向が強まっています。
この変化により、ユーザーはWebサイトを訪問せずとも、ブランド名や商品情報、評価に触れる機会が増えています。一方で、企業側にとっては「流入数」だけではマーケティング成果を測れない状況が広がっています。
今後のマーケティングでは、「検索結果やAIの回答の中で、どのようにブランドが認識されているか」「プラットフォーム上で信頼や想起をどう築くか」といった視点が、これまで以上に重要になります。
💡韓国マーケティングへの示唆
- 検索結果やAI要約内での情報の見え方を意識した情報設計
- 検索流入に依存せず、SNSやコミュニティを通じた認知・信頼構築を並行して行う
④ ピクセル・ライフ(Pixelated Life)

― 小さな体験を素早く消費するマイクロトレンド時代
韓国の消費者の間では、少量・短期間・限定的な商品やサービスを気軽に試し、その時々のトレンドを楽しむ「ピクセル・ライフ(Pixelated Life)」と呼ばれる消費スタイルが広がっています。
これは、デジタル画像のピクセルのように、消費体験が細かく分解され、短いサイクルで次々と移り変わる状況を表しています。
SNSを起点に、小さな流行が一気に拡散され、短期間で消費されていく韓国市場では、従来のように一つの大きなトレンドを長期的に追い続ける手法は機能しづらくなっています。
マーケティングにおいても、完璧な施策を一度で打つより、小さく試し、反応を見ながら改善を重ねる柔軟な運用が求められます。
💡韓国マーケティングへの示唆
- SNSや検索データを活用し、マイクロトレンドを早期に察知する
- 小規模なプロモーションやA/Bテストを前提とした運用体制を整える
結論
2025年の韓国市場では、AIの普及を起点に、情報接触・データ活用・クリエイティブ評価の前提が大きく変化しました。
2026年に向けては、プラットフォーム選定だけでなく、「AIと人の役割分担」「感情価値の設計」「クリックに依存しない接触設計」といった考え方そのものが、マーケティング成果を左右します。
韓国市場に取り組む日本企業には、こうした前提変化を踏まえた戦略再設計が求められています。

チェ ヨンス マーケティング部
大学では日本語の通訳・翻訳を専攻し、韓国から日本への移住を決意。 「日本と世界をデジタルで繋ぐ」マーケターとして活躍したいとを思い、インフォキュービック・ジャパンへ入社。 淡水エビ・タランチュラ・大型オウム・希少クワガタなどの飼育・繁殖経験もあるほど生き物が大好きです。現在、ヤモリを飼育して10年以上、ヤモリ愛に溢れた韓国人です。

